中田英寿プロデュース「N」 |
──日本酒が世界に出ていくために、どんな部分が欠けていると感じましたか?まずは海外で高級な日本酒市場を開拓していくことを考えているそうです。海外での知名度が中田氏ならではですよね。
中田:まず、海外での日本酒の価格。製造技術が向上し、品質も良くなっているのに、同じ醸造酒であるワインと比較して、安すぎると私は考えています。市場を拡大させていくためには、ワインのように価格帯の幅を広げていく必要があると思いました。
そして世界で日本酒が売れていくためには、人にきちんと伝わるブランディングをしていかなくてはなりません。つまり、名前を覚えてもらい、価値を知ってもらうことが必要です。
日本酒は伝統産業なので、日本国内で値上げをすることが難しい。だから、海外で先にブランディングをして、高級市場を作っていく方が良いのではないかと考えました。
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中田:Nは海外でしか販売せず、1000本の限定生産です。そして、私たちで最低市場価格を設定しています。Nの目的は、売れることではありません。これを、1万本生産して稼ごう、などとは全く考えていないのです。
以下めも。
中田:私は一年365日外食で、色々な料理を食べていますが、和食やフレンチというカテゴリーに関わらず、料理の味の構築というのは、基本的に変わらないと考えています。なぜなら、酸味、甘味、苦味など、人間の感じ取れる味には限界があり、料理とはそれをどういうバランス、レイヤーで感じさせるかがすべてだと思っているからです。料理は「味のバランス」と「レイヤー」を重視している。
日本酒でも、例えば、最初甘みがあってから、酸味で切る、または、まず酸味があり、後に甘みでカバーする──どちらにしても、乗せる味の構成要素は同じですよね。
味の複雑性、順番として、普通の人が三層のレイヤーで作るところを、より多くかつ複雑なレイヤーで作れるかどうか。そういうところにセンスが現れると思っていますし、Nはそこを考えて作っているつもりです。
──とても興味深いです。赤身の肉にも合わせられる日本酒、とおっしゃっていましたが、赤ワインとの違いとして、タンニンの有無があると思いますが、そのあたりはどう捉えていらっしゃいますか?ワインは料理の味を切るため、日本酒は料理の味を増幅させるために飲むもの。φ(..)メモメモ
中田:基本的に、ワインと日本酒のペアリングの仕方は異なると思っています。ワインは料理の味を切るもの、日本酒は料理の味を倍増させるものです。味の深みは、タンニンである必要がなく、日本酒の持つコクで出していける。
食事でワインや日本酒を飲むにも理由があったんですね。